

犬の僧帽弁閉鎖不全症のステージDとは|末期心不全と向き合い、愛犬を支えるために
2025年08月28日カテゴリ|コラム
犬の僧帽弁閉鎖不全症のステージDとは|末期心不全と向き合い、愛犬を支えるために
僧帽弁閉鎖不全症は老齢の小型犬に多く見られる心臓病です。
進行性の心臓病である僧帽弁閉鎖不全症は、症状に応じてステージが進んでいき、ステージDは末期段階とも言える状態です。
ステージDに至ると治療に対する反応が乏しく、急変や命に関わる状態になることもあります。
今回は、僧帽弁閉鎖不全症ステージDについて、どのような状態なのか、考えられる治療と日常のケア、飼い主様ができることを詳しく解説します。
心臓病の愛犬と過ごす時間を大切にするために、ぜひ最後までお読みください。
僧帽弁閉鎖不全症とステージ分類(ACVIM分類)
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の弁がうまく閉じず、血液が逆流して心臓に負担をかける病気です。
ACVIM分類では進行度が次のように分けられます。
- ステージA:リスクはあるが心臓に異常なし
- ステージB1:心雑音あり、心拡大なし、無症状
- ステージB2:心拡大あり、無症状
- ステージC:症状が現れた心不全期
- ステージD:治療抵抗性の末期心不全
今回はステージDについて詳しく見ていきましょう。
ステージDとは?
僧帽弁閉鎖不全症のステージDは、これまでのステージで行ってきた内科治療(強心薬、利尿薬、血管拡張薬など)では十分にコントロールできない、治療抵抗性の末期心不全状態です。
心臓の負担が極限に達し、肺水腫による呼吸困難や全身への血流不足で、日常生活に支障をきたします。
症状としては
- 口を開けて呼吸する
- 安静時も呼吸が浅い
- 食欲不振、脱水、体重減少
- 起立困難
- 咳の悪化
- 失神やふらつき
などが見られることがあります。
ステージDの段階では、犬自身も非常に苦しく、命の危険が高い状態です。
このような状態の時はいつ心臓が止まってもおかしくないため、迷わず動物病院に連絡し、適切な対応を受けましょう。
ステージDの治療とケア
僧帽弁閉鎖不全症のステージDの治療では、少しでも楽に過ごせるように対症療法を行います。
- 利尿薬の増量や組み合わせで肺水腫の緩和
- 強心薬(ピモベンダンなど)や血管拡張薬で心臓負担を軽減
- 酸素吸入や点滴療法
- 必要に応じて入院管理
などの治療を本人の状態に合わせて行っていきます。
ステージDの段階では治療で心臓そのものがよくなることはほとんどないため、どれだけ症状を和らげ、生活の質を少しでも上げることができるかがポイントになります。
末期の段階だからといって治療ができないというわけではありません。
犬の体の負担を少しでも取り除くためにも、できる治療を行っていきましょう。
日常でできること、家族としてできること
僧帽弁閉鎖不全症のステージDの段階では、病院への頻繁な通院も難しいためご自宅でできるケアが重要になってきます。
安静で過ごせる環境づくり
犬が呼吸がしやすい体勢を整え、室温・湿度を快適に保つことで、興奮せずに安静に過ごす環境を作ることができます。
食事と水分補給
ステージDでは食欲が低下することが多いので、食べやすいフードにするなど工夫しましょう。
場合によっては流動食の検討も必要です。
こまめな観察
呼吸数、苦しさ、食欲などをよく観察し、異変があればすぐ動物病院へ相談しましょう。
通院が難しい時は、どのような対応をすればいいか獣医師に聞いてみてもいいかもしれません。
家族のサポート
ステージDの犬は体もしんどいことが多く、見ている飼い主様も辛くなるかもしれません。
飼い主様も無理をせず、家族や動物病院と連携を取りながら、犬と一緒に穏やかな時間を大切にしてください。
まとめ
犬の僧帽弁閉鎖不全症ステージDは、「治療が効きにくい末期心不全」で急変の可能性が高い状態です。
「様子を見よう」とは考えず、少しでも異変を感じたらすぐに受診し、愛犬にとってできる限りのサポートを行いましょう。
当院では、循環器診療に力を入れており、末期心不全の犬とそのご家族をサポートしています。
「呼吸が苦しそうで心配」「何をしたらいいかわからない」と感じたら、早めにご相談ください。
愛犬と一緒に過ごす時間を大切に、少しでも穏やかに過ごせるよう一緒に考えていきましょう。
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