犬の僧帽弁閉鎖不全症は進行する? |病気の進み方と悪化のサインを獣医師が解説
2026年02月14日カテゴリ|コラム
「僧帽弁閉鎖不全症と診断されたけれど、今は元気そう」
「この先、どのように進行していくのかが不安」
愛犬が僧帽弁閉鎖不全症と診断され、このような気持ちを抱えている飼い主さんは多いのではないでしょうか。
犬の僧帽弁閉鎖不全症は、時間とともに少しずつ進行していく心臓病です。
進行のスピードや症状の現れ方には犬の個体差があります。
犬の状態を適切に管理することで、犬が穏やかに過ごせる期間を長く保つことも可能です。
今回は、
- 犬の僧帽弁閉鎖不全症がどのように進行していくのか
- 犬の僧帽弁閉鎖不全症の進行時に見られるサイン
についてできるだけ分かりやすく解説します。
愛犬が僧帽弁閉鎖不全症と診断されたときに、参考にしていただければ幸いです。
犬の僧帽弁閉鎖不全症について
犬の心臓は
- 右心房
- 右心室
- 左心房
- 左心室
という、4つの部屋からできています。
血液はこれらの順番に部屋を通って、最終的に全身へ送り出されます。
それぞれの部屋の間には「弁」と呼ばれる扉があり、血液が逆流しないようにする役割があります。
このうち、左心房と左心室の間にある弁が「僧帽弁」です。
つまり僧帽弁の役割は左心房から左心室に流れる血液の逆流を防ぐということですね。
犬の僧帽弁閉鎖不全症とは、この僧帽弁が加齢などによって変性し、うまく閉じなくなってしまう病気です。
僧帽弁がしっかり閉じないと、心臓が収縮するたびに左心室から左心房へ血液が逆流してしまいます。
この逆流が続くことで、
- 心臓は余分な力を使って血液を送り出さなければならなくなる
- 左心房や左心室が少しずつ大きくなる
- 心臓全体に負担がかかる
といった変化が徐々に進行していきます。
犬の僧帽弁閉鎖不全症は小型犬や高齢犬に多くみられ、初期のうちは症状がほとんど出ないことが特徴です。
そのため、健康診断やワクチン接種時の聴診で「心雑音」を指摘され、初めて気づくケースもあります。
犬の僧帽弁閉鎖不全症が進行する理由
犬の僧帽弁閉鎖不全症は症状や病態が進行していく病気です。
僧帽弁閉鎖不全症が進行する最大の理由は、弁の変性が時間とともに進むためです。
一度変性が始まった僧帽弁は、自然に元の状態へ戻ることはありません。
逆流が続くと心臓はそれを補おうとして拡大し、一時的には全身の血流を保つことが可能です。
しかし、心臓の拡大は永遠には続かず、やがて心臓の負担が限界を超えると症状として現れてきます。
僧帽弁閉鎖不全症は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、全体としては進行していく病気と考えられています。
そのため、犬の僧帽弁閉鎖不全症は早期発見がとても重要です。
ステージ分類で見る犬の僧帽弁閉鎖不全症の進行
犬の僧帽弁閉鎖不全症の進行は「ACVIMステージ分類(A〜D)」で表されます。
それぞれについて解説していきます
ステージA
ステージAは、現時点では僧帽弁閉鎖不全症を発症していない状態です。
以下の犬種のような、僧帽弁閉鎖不全症になりやすい犬種が該当します。
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- マルチーズ
- チワワ
- ポメラニアン
ステージAでは、
- 心雑音は聞こえない
- 心臓の検査でも異常は見つからない
- 日常生活に制限は不要
という状態です。
現時点では、治療は必要ありませんが、将来的な発症に備えて定期的な健康診断や聴診を受けておくことが大切になります。
ステージB
ステージBは、僧帽弁閉鎖不全症をすでに発症しているものの、心不全症状が出ていない段階です。
聴診で犬に心雑音が確認され、心臓超音波検査などで逆流や心臓の変化が認められます。
このステージはさらに、
- B1:心臓の拡大がほとんどない状態
- B2:心臓の拡大が明らかな状態
に分けられます。
飼い主様から見ると元気に見えるため、「本当に心臓病なの?」と感じることも多いかもしれません。
B2では将来の心不全発症リスクが高くなるため、進行を抑える目的で内服治療が開始されることがあります。
この段階での定期検査は予後に大きく関わってくるため重要です。
ステージC
ステージCは、僧帽弁閉鎖不全症が進行し、心不全の症状が実際に現れた段階です。
心不全の症状には以下のようなものが挙げられます。
- 咳が増える
- 呼吸が速く、苦しそうになる
- 散歩を嫌がる、疲れやすい
- 寝ている時間が明らかに増える
この段階では、肺に水がたまる「肺水腫」を起こすこともあり、命に関わる状態になることがあります。
肺水腫の治療は複数の心臓薬を組み合わせて行われ、状態によっては入院治療が必要です。
日常生活では、安静時呼吸数のチェックなど自宅での観察が重要になります。
ステージD
ステージDは、標準的な治療を行っても心不全のコントロールが難しくなった段階です。
症状の再発を繰り返したり、少しの変化で状態が急激に悪化することがあります。
この段階では、
- 呼吸状態が不安定
- 食欲が落ちやすい
- 体力の低下が目立つ
といった症状が犬に見られます。
治療は個々の状態に合わせた専門的で細やかな管理が必要となり、通院頻度や投薬内容も増える傾向があります。
進行する僧帽弁閉鎖不全症の犬に飼い主様が自宅でできること
愛犬が僧帽弁閉鎖不全症と診断されたら、「何か飼い主にできることはないのか」と思われる方も多いでしょう。
僧帽弁閉鎖不全症と向き合ううえで、飼い主様の役割はとても大きなものです。
飼い主様が自宅でできることをいくつかご紹介します。
- 安静時の呼吸数を定期的に確認する
- 咳や元気・食欲の変化を記録する
- 体重管理を心がける
- 指示された薬を正しく続ける
日々の小さな変化に気づくことが、進行の早期発見と適切な治療につながります。
まとめ
犬の僧帽弁閉鎖不全症は、徐々に進行してしまう心臓の病気です。
早い段階から病気と正しく向き合い、適切な治療とケアを続けることで、穏やかで快適な生活を長く維持できる可能性はあります。
犬の僧帽弁閉鎖不全症の適切な診断と治療には専門的な知識や技術が必要です。
当院では、犬の心僧帽弁閉鎖不全症を含む循環器診療に力を入れています。
「心臓に雑音があると言われた」「治療中だけど心不全のコントロールがうまくいってない」という場合には、ぜひ当院に一度ご相談ください。
松井山手・八幡・枚方・長尾の動物病院
松井山手動物病院




