





犬の僧帽弁閉鎖不全症が急変したらどうする?|急変時の対応を獣医師が解説
2025年05月21日カテゴリ|コラム
犬の僧帽弁閉鎖不全症が急変したらどうする?|急変時の対応を獣医師が解説
「動物病院で心臓病と診断されたから急変しないか不安…」
「急変した時にどう対応したらいいのかわからない」
こんなお悩みを抱えている犬の飼い主様は多いのではないでしょうか?
犬で一番多く診断される心臓病は僧帽弁閉鎖不全症という病気です。
実際犬の僧帽弁閉鎖不全症では急変することがあり、そのまま亡くなってしまうこともあります。
今回はその僧帽弁閉鎖不全症がどういう時に急変するのか、急変した時にどういう対応をしたらいいのかについて解説していきます。
ぜひ参考にしていただき、いざという時に備えていただけると幸いです。
犬の僧帽弁閉鎖不全症とは
僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁という心臓の中の弁に異常を来たし、心臓の中で血液が逆流してしまう病気です。
血液が多少逆流するだけだと無症状に見えるため、僧帽弁閉鎖不全症は発見が遅れることが多いですね。
そのまま血液の逆流が続くと心臓が大きくなり、気管を圧迫し、咳が出るようになり、飼い主様の目からも症状が出ていることがわかるようになります。
さらに逆流が続くと肺の血管まで血液が逆流し、肺の血管から水が滲み出すことで、肺水腫という状態になります。
肺水腫とはいわゆる心不全という状態で「常に溺れている状態」ですね。
恐ろしいことに肺水腫は緊急治療をしないと命を落としてしまいます。
犬の僧帽弁閉鎖不全症が急変するのは?
ここまで解説したように、犬の僧帽弁閉鎖不全症は僧帽弁での逆流が継続することにより徐々に悪化していくものです。
しかし、中には急激に悪化することもあります。
ここではどういう状況になったら僧帽弁閉鎖不全症が急変するかについて解説していきます。
腱策断裂による肺水腫
僧帽弁は腱策という糸のようなもので、血液が逆流しないように僧帽弁を制御しています。
「パラシュートのひも」のような構造で、僧帽弁が反転しないようにしています。
この腱策が何らかの原因で断裂してしまうことを腱策断裂といいます。
腱策断裂を引き起こすと僧帽弁が制御できなくなり、一気に血液の逆流量が増えるため、無症状だった状態から急に肺水腫を引き起こすことがあります。
肺水腫を引き起こすと
- 苦しくて異常に呼吸が早くなる
- 舌の色が紫色になる(チアノーゼ)
- ピンク色の水を吐き出す(喀血)
という症状が見られます。
不整脈
心臓の正常な脈は、心臓を通る電流により作られています。
犬の僧帽弁閉鎖不全症では、心臓は大きくなり、心臓の筋肉が線維化し、正常な電流が流れなくなることがあります。
それにより時には不整脈が引き起こされ、失神することがあります。
犬の僧帽弁閉鎖不全症を急変させないためには
犬の僧帽弁閉鎖不全症が急変するタイミングを予測することはできません。
しかし、僧帽弁閉鎖不全症を急変させないよう日頃から手を打つことはできます。
ここでは僧帽弁閉鎖不全症を急変させないためにできることを解説していきます。
血圧を上げない
僧帽弁閉鎖不全症を悪化させないためにできることの一つに、血圧を上げないということがあります。
血圧が上がると僧帽弁にかかる圧力が増えたり、逆流量が増えることで、肺水腫や不整脈が起こりやすくなります。
では血圧を上げないためにはどのようなことをすれば良いのでしょうか?
興奮させない
犬は興奮すると血圧が上がります。
犬が興奮するのは以下のような状況が挙げられます。
- インターホンの音がなった時
- パトカーや救急車のサイレンが聞こえた時
- 急な来客が会った時
- 散歩中に仲の悪い犬に会った時
このような状況には極力遭遇しないように配慮しましょう。
食事に気をつける
血圧を上げるものの一つに食事中の塩分が挙げられます。
犬用のペットフードであれば過度な塩分は入っていないため問題はありません。
しかし、人間用の食事には犬にとっては過剰な塩分が含まれています。
「これくらいなら大丈夫だろう」
と油断せず、人間用の食事は絶対に与えないようにしましょう。
定期的に動物病院を受診する
いかに普段から悪化しないような対策を講じていたとしても、実は水面下で状態が悪化していることもあります。
動物病院で定期的に検診を受けることで、今の状態を正確に判断することができ、場合によっては薬を飲むことで急変を予防できることができます。
動物病院で診察を受けるときは、獣医師の再診の指示を必ず聞くようにしましょう。
犬の僧帽弁閉鎖不全症が急変したらどうする?
日頃からどれだけ気をつけていたとしても、犬の僧帽弁閉鎖不全症は急変してしまうことがあります。
僧帽弁閉鎖不全症が急変した場合にすべきことは
「すぐに動物病院を受診すること」
です。
かかりつけの動物病院が休診の場合は、次の日まで様子を見たりせず、夜間救急に問い合わせましょう。
動物病院に到着したら、すぐに緊急対応してもらえるよう受付で今の症状を伝えることが大事です。
すぐに緊急対応をするには動物病院にも準備が必要です。
動物病院まで移動している途中でもいいので、今から受診する旨を電話で伝えておきましょう。
まとめ
犬の僧帽弁閉鎖不全症は基本的に徐々に進行する病気です。
しかし、予期せぬタイミングで急変することもある病気です。
いざその時になった場合、大事な愛犬を助けるために今のうちに正しい知識をつけておきましょう。
当院は動物循環器認定医による犬と猫の心臓病治療に力を入れています。
もし犬と猫の心臓病でお困りの方はいつでも当院までご相談ください。
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犬の天疱瘡|犬の顔に水ぶくれやカサブタそして脱毛。天疱瘡とはどんな病気?
2025年05月14日カテゴリ|コラム
犬の天疱瘡|犬の顔に水ぶくれやカサブタそして脱毛。天疱瘡とはどんな病気?
犬の皮膚病に天疱瘡という病気があります。
天疱瘡とは免疫が自分の皮膚を攻撃してしまう自己免疫性疾患の1つです。
犬でよく見られる犬アトピー性皮膚炎や膿皮症などとは異なり、あまり聞き慣れない病気かもしれません。
「天疱瘡ってどんな病気なの?」
「犬が天疱瘡になってしまったらどうしたらいいの?」
という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
今回はこの犬の天疱瘡について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、犬の天疱瘡についての理解を深めましょう。
犬の天疱瘡とは
犬の天疱瘡は自己免疫性疾患の1つです。
免疫に異常が起きて自分の皮膚を攻撃してしまうことで皮膚に症状が現れます。
病変が現れる部位や症状によって
- 落葉状
- 紅斑性
- 尋常性
- 増殖性
の4つに分類されます。
犬では落葉状天疱瘡が最も多く、その次に尋常性天疱瘡が多いです。
増殖性天疱瘡は稀です。
発症は4〜5歳の犬に多いといわれています。
好発犬種には
- 秋田犬
- ドーベルマン
- チャウチャウ
- ジャーマンシェパードドッグ
- ミニチュアダックスフント
- ニューファンドランド
などが挙げられます。
犬の天疱瘡の原因
犬の天疱瘡は、免疫に異常が起きて自分の皮膚のタンパク質を攻撃してしまうことで起こります。
攻撃の標的になるのは皮膚の細胞間を接着させているタンパク質です。
細胞間の接着が障害されることで皮膚にトラブルが起きて症状が現れます。
紫外線が悪化要因の1つとも言われていますが詳しくはまだわかっていません。
天疱瘡は一般的には夏に発症することが多く、悪化する症例も夏に多いと言われています。
紫外線が強くなる夏に多い病気ということは、紫外線が関連している可能性は高いのかもしれませんね。
犬の天疱瘡の症状
犬の天疱瘡では皮膚や口の中に
- 水疱
- びらん
- かさぶた
- 脱毛
などができます。
犬で多い落葉状天疱瘡では最初に病変部が赤くなり、次に水疱になり、それが破れてかさぶたになるというように症状が進行していきます。
落葉状天疱瘡では主に
- まぶた
- 鼻筋
- 耳
- 肉球
- 指の間
などに症状がみられることが多いです。
かゆみの程度は様々ですが、二次的に感染がある時には強いかゆみが出ることもあります。
「犬の鼻にカサカサしたかさぶたがある。」
「犬の皮膚に水ぶくれのようなものがある。」
こんなことがあったら、なるべく早く動物病院を受診しましょう。
犬の天疱瘡の診断
犬の天疱瘡を診断するには、症状がある部分の皮膚を検査します。
細菌培養検査を行うことで他の皮膚疾患との鑑別を行います。
しかし天疱瘡が進行していると細菌感染も併発していることがあるため、鑑別が難しいです。
確定診断をするためには病変部分の組織を病理検査に出します。
病理検査では、組織学的検査や免疫組織学的検査と呼ばれる詳しい検査を行います。
犬の天疱瘡の治療
犬の天疱瘡は自己免疫疾患です。
天疱瘡の治療では免疫の異常な働きを抑えるために、ステロイドや免疫抑制剤を使用します。
薬の投与は長期間に及ぶことが多いです。
皮膚の症状をみながら、改善していれば薬の量を減らしていきます。
また、細菌感染が併発している場合は抗生物質を合わせて使用することもあります。
犬の天疱瘡はコントロールが難しく再発も多いです。
獣医師としっかりと相談しながら適切な投薬を行いましょう。
犬の天疱瘡の予防
犬の天疱瘡には確実な予防方法はありません。
紫外線は天疱瘡の悪化要因ともいわれています。
紫外線への対策は有効かもしれません。
- 外出時には服を着せる
- 屋外飼育の場合は屋根を広くする
などの方法を試してみるのもいいですね。
まとめ
天疱瘡は一度発症すると長期的な治療が必要な病気です。
犬の皮膚にかさぶたや水疱などの症状が見られたらなるべく早く動物病院に行きましょう。
治療が始まったら根気強く通院することが必要です。
当院は皮膚科診療に力を入れています。
犬の皮膚トラブルについてのご相談がありましたら、ぜひ当院にお問い合わせください。
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