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犬の皮膚病と甲状腺機能低下症|ホルモン異常が原因で皮膚病に?獣医師が解説

2025年12月21日カテゴリ|コラム

犬の皮膚病と甲状腺機能低下症|ホルモン異常が原因で皮膚病に?獣医師が解説

砂浜で佇む毛並みの悪い犬

犬の皮膚病の原因にはアレルギーや感染症などさまざまなものがありますが、ホルモンの異常もその1つということをご存知でしょうか。

「犬の皮膚に左右対称に脱毛している部分がある。」
「近ごろ犬の元気がなく、毛並みもよくない気がする。」
これらの症状は甲状腺機能低下症というホルモンの病気が関連しているかもしれません。

今回は犬の皮膚病と甲状腺機能低下症の関係について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、皮膚病で動物病院受診を受診するときの参考にしていただければ幸いです。

犬の甲状腺機能低下症について

甲状腺機能低下症とは甲状腺の働きが低下してしまう疾患です。
甲状腺機能低下症は中高齢の犬で発症が多いといわれています。
甲状腺とは犬の喉のあたりにある器官で、全身の代謝を上げる甲状腺ホルモンというホルモンを分泌しています。
甲状腺ホルモンは脂肪を燃焼させたり免疫を活性化したりと、体を活気づかせるような働きをするホルモンです。
甲状腺機能低下症によって甲状腺ホルモンが不足すると体全体の活気が無くなり、不調があらわれます。
ここからは甲状腺機能低下症がどのような病気なのかについてさらに詳しく解説します。

犬の甲状腺機能低下症の症状

犬の甲状腺機能低下症では

  • 脱毛などの皮膚症状
  • 肥満
  • 活動性の低下
  • 心拍数の低下
  • 悲しそうな表情

などの症状が見られます。
甲状腺機能低下症の皮膚症状には

  • 左右対称性脱毛
  • 尻尾の脱毛
  • パピーコート
  • 繰り返す膿皮症
  • 角化異常

などがあります。
全体的に皮膚の状態が悪くなり、毛質の変化や脱毛がみられるという印象です。
パピーコートとはふさふさでツヤツヤしていた犬の毛が、子犬のように短くパサパサした質感になることです。

犬の甲状腺機能低下症の治療

犬の甲状腺機能低下症の治療では薬を飲むことで不足している甲状腺ホルモンを補います。
薬を飲むと症状は良くなることが多いですが、甲状腺の機能を元に戻すことはできません。
甲状腺機能低下症では薬を長期間飲み続ける必要があります。
しかし薬を飲み続けると甲状腺ホルモンが多くなり過ぎてしまうことがあります。
甲状腺ホルモンが多すぎると副作用があらわれるため、2〜3ヶ月に1回は血液検査をして甲状腺ホルモンが適正な濃度で保たれているかを確認することが必要です。

甲状腺機能低下症と皮膚病の関係

道で佇む白い犬

甲状腺機能低下症では脱毛をはじめとする様々な皮膚症状がみられます。
「甲状腺機能低下症と皮膚病はどういう関係があるの?」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
ここからは甲状腺機能低下症と皮膚病の関係について詳しく解説いたします。

甲状腺機能低下症によって皮膚病が発症するのは、甲状腺ホルモンの不足により

  • 皮膚の免疫力の低下
  • 皮膚の新陳代謝の低下
  • 毛周期の異常

などがおこるためです。
健康な犬の皮膚には常在菌がいて、皮膚の状態を良好に保ってくれています。
この常在菌は皮膚の免疫力によってバランスが保たれています。
甲状腺機能低下症によって皮膚の免疫力が低下すると、皮膚の常在菌のバランスが崩れ皮膚にとって悪い菌が繁殖しやすくなりますね。
このとき発症するリスクが高まるのは膿皮症という皮膚の感染症です。
甲状腺機能低下症による脱毛では通常痒みを伴いませんが、膿皮症を発症してしまうと炎症がおきて痒みが出ることもあります。
甲状腺機能低下症では皮膚の新陳代謝も低下します。
皮膚の新陳代謝が低下すると皮膚のターンオーバーに異常が起きて、皮膚がカサカサしたりフケが多くなったりしますね。
また甲状腺機能低下症は毛周期という毛の成長周期にも異常をおこします。
健康な犬の毛がふさふさの状態を保っているのは、毛周期が正常に働いているためです。
毛周期が正常に働いていると、毛が生えたり抜けたりを繰り返して常に新しい毛が生えている状態が保たれます。
毛周期に異常が起こると毛の成長が止まって新しい毛が生えてこず、脱毛したままの状態になってしまいます。
このように、甲状腺機能低下症によって免疫力や全身の代謝が下がることで皮膚に異常がおこるということです。

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甲状腺機能低下症が原因の皮膚病の治療で重要なこと

甲状腺機能低下症が原因の皮膚病は皮膚病を治療するのではなく、甲状腺機能低下症を治療することが大切です。
見えている皮膚の症状に対する治療だけをしても、同じ症状を繰り返すだけになってしまいます。
つまり犬の甲状腺機能低下症が原因の皮膚病の治療は、経験豊富な獣医師による正しい診断が治療のカギというですね。
繰り返す膿皮症や治らない脱毛症の治療を受けていた犬が、セカンドオピニオンで行った病院で甲状腺機能低下症の診断を受け皮膚の症状が改善したという例もあります。
甲状腺機能低下症による皮膚病の治療は動物病院選びから始まるといっても過言ではありません。

まとめ

落ち葉の中で横を向いている柴犬

いかがでしたか?

甲状腺機能低下症と皮膚病には深い関係があるということがお分かりいただけたでしょうか。
甲状腺機能低下症に気がつかずに皮膚病の治療をしても治療効果は低いままです。
甲状腺機能低下症による皮膚病の治療は経験豊富な獣医師の適切な診断が正しい治療へのカギとなります。

当院では皮膚科診療に力を入れています。
豊富な経験と知識で多くの皮膚科症例の診療を行っています。
「犬の皮膚病でずっと動物病院に通っているけれど全然治らない。」
こんなお悩みをお持ちの飼い主様がいらっしゃいましたらぜひ当院へご相談ください。

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