

犬の耳血腫はどんな病気?|手術が必要になるケースを含めて獣医師が解説
2025年09月14日カテゴリ|コラム
犬の耳血腫はどんな病気?|手術が必要になるケースを含めて獣医師が解説
「最近、犬の耳が腫れてきた」
「耳をよく振ったり、かゆがったりしている」
「腫れた耳を触るとぷよぷよしているけど、痛がる様子はない」
このような症状がある場合、「耳血腫(じけっしゅ)」という病気の可能性があります。
耳血腫は、耳介(耳たぶのような部分)に血液や体液がたまり、腫れあがる病気です。
放っておくと耳の変形や慢性炎症につながることもあります。
今回は犬の耳血腫について、原因や治療法、特に手術の必要性について詳しくご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の耳の病気について知見を深めてください。
犬の耳血腫とは?
犬の耳血腫とは、耳の皮膚の内側にある血管が破れて出血し、血液が皮膚と軟骨の間にたまってしまう状態です。
外見上は、耳がぷっくりと腫れ、触るとふくらんだ水風船のように感じられることが多いです。
耳血腫は特に
- 垂れ耳の犬種
- アレルギー体質の犬
- 耳のかゆみや炎症が慢性的にある犬
に起こりやすいとされています。
耳血腫の原因
耳血腫の多くは、耳を激しく振ったりかいたりすることで起こるとされています。
耳介に物理的なダメージが加わり、血管が破れることで耳血腫につながるのです。
犬が耳を振ったりかいたりする主な原因には次のようなものがあります。
- 外耳炎
- アレルギー性皮膚炎
- マラセチアや細菌感染
- ノミ・ダニなどの寄生虫
- 外傷
耳血腫の原因には、耳の中の病気が背景にあることが多いです。
耳血腫ができた場合は原因を突き止めて根本的に治療することが大切です。
耳血腫の治療法について
耳血腫の治療には大きく分けて「内科的治療」と「外科的治療(手術)」の2つがあります。
軽度の場合は、針で中の血液を抜き、抗炎症薬を注射するなどの内科的な処置で様子を見ることがあります。
ただし、血液が再度たまりやすく、抜いても再発してしまったり、何度も同じ処置を繰り返さなければならないケースも少なくありません。
繰り返し針で血を抜いていると
- 麻酔や鎮痛のストレスが処置の度にかかる
- 針穴から感染を招くことがある
- 炎症が長引くと耳の形が変形する
といったデメリットが起こりやすくなります。
耳血腫が再発を繰り返す場合や、出血量が多く耳が重度に腫れている場合には、外科的に耳を切開してたまった血液や血餅を取り除く「耳血腫整復術」が検討されます。
手術の流れと術後の注意点
耳血腫の手術では、耳介に切開を入れて中の血液を完全に排出し、軟骨と皮膚が再度癒着するように縫合する治療が行われます。
これにより再発を防ぐとともに、耳の変形を最小限に抑えることができます。
術後は以下のようなケアが必要です。
- 抗生剤や消炎剤の投与
- エリザベスカラーの装着
- 耳の包帯固定
- 定期的な通院と処置
- 原因となった外耳炎などの治療の継続
術後2〜3週間ほどで抜糸が行われるのが一般的です。
耳は犬がストレスを感じやすい部位でもあるため、術後の管理は飼い主様と動物病院が連携して進めることが重要です。
放置するとどうなる?
耳血腫を外科治療せずに放置してしまうと、耳がしぼんだり、しわしわになったりして「カリフラワー耳」と呼ばれる特徴的な耳の変形を起こすことがあります。
また、たまった血液が吸収される過程で慢性的な炎症を引き起こし、痛みやかゆみが長期化することもあります。
見た目の問題だけでなく、耳の機能に悪影響を与えるリスクもあるため、早めの治療がおすすめです。
まとめ
犬の耳血腫は比較的よくみられる病気ですが、再発や変形を防ぐためには適切な治療が必要です。
初期には内科的治療が行われることもありますが、繰り返す場合や重度の場合は手術が最も確実な治療法です。
耳の腫れや異変に気づいた際は、できるだけ早く動物病院を受診し、適切な対応を受けましょう。
当院では、耳血腫の手術を含めた耳のトラブルにも対応しています。
「最近耳の様子がおかしい」「何度も耳血腫を繰り返している」といった場合には、ぜひ一度ご相談ください。
松井山手・八幡・枚方・長尾の動物病院
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フレンチブルドッグの皮膚病について|かゆみ・赤みの原因を知っていますか?
2025年09月07日カテゴリ|コラム
フレンチブルドッグの皮膚病について|かゆみ・赤みの原因を知っていますか?
フレンチブルドッグの皮膚が赤くなってかゆがっていたり、フケが多くなったりしたことはありませんか?
フレンチブルドッグはその愛らしい見た目とは裏腹に、皮膚のトラブルが起きやすい犬種として知られています。
今回は、フレンチブルドッグに多い皮膚病とその原因・治療法についてわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、皮膚トラブルの予防や早期対処にお役立てください。
フレンチブルドッグはなぜ皮膚病が多いの?
フレンチブルドッグは短毛でしっかりした体格の犬種です。
皮膚が非常にデリケートな犬でもあります。
皮膚病が多い理由として、以下のような体質や特徴があります。
- 皮膚が薄くて敏感
- 皮脂の分泌が多い
- 顔や体にシワが多く、通気性が悪い
- アレルギー体質の個体が多い
これらの要素が重なることで、ちょっとした刺激や湿気によって皮膚に炎症が起こりやすくなります。
よくある皮膚病とその特徴
フレンチブルドッグに多い皮膚病には、次のようなものがあります。
犬アトピー性皮膚炎
犬アトピー性皮膚炎はアレルギーの一種で、体質的に皮膚に炎症を起こしやすい状態です。
フレンチブルドッグでは若い頃から発症することが多く、かゆみが主な症状です。
顔・耳・脇・足先などをしきりに掻いたり舐めたりする行動が見られます。
マラセチア性皮膚炎
マラセチア性皮膚炎は皮膚に常在するマラセチアという酵母菌による炎症です。
マラセチアが異常に増殖して、かゆみ・赤み・脂っぽい臭いを伴う皮膚炎を起こします。
皮脂の分泌が多いフレンチブルドッグはマラセチア性皮膚炎を発症しやすくなります。
フレンチブルドッグの耳やシワの間、脇の下などがよく影響を受けやすい箇所です。
細菌性皮膚炎(膿皮症)
細菌性皮膚炎は皮膚に小さなブツブツができたり、赤くなったり、かさぶたになったりする病気です。
かゆみのある部分をかき壊すことで細菌が繁殖し、さらに悪化することもあります。
細菌性皮膚炎は繰り返す傾向があるため、体質に応じたスキンケアが必要です。
ノミアレルギー性皮膚炎
ノミアレルギー性皮膚炎はノミに刺されることによる強いかゆみと炎症が起きる病気です。
しっぽの付け根や背中、腰回りに強いかゆみが出るのが特徴です。
ノミの寄生が見えなくても、刺された痕跡だけでアレルギー反応を起こす場合があります。
食物アレルギー
食物アレルギーは、特定の食材に対してアレルギー反応を起こす病気です。
皮膚炎や下痢を伴うことがあります。毎日食べているごはんが原因となるため、気づかれにくいケースもあります。
診断と治療の流れ
フレンチブルドッグの皮膚病は、原因が1つとは限らないことが多いため、正確な診断がとても大切です。
診断には以下のような検査が行われます。
- 皮膚検査(顕微鏡・テープ検査)
- 血液検査
- アレルギー検査
治療法は原因によって異なりますが、次のような方法を組み合わせて行います。
- 内服薬(抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、抗真菌薬など)
- 外用薬(塗り薬、シャンプー)
- 食事療法(アレルゲン除去食など)
- スキンケア(定期的なシャンプーや保湿)
- 生活環境の改善(清潔な寝床、湿度管理など)
フレンチブルドッグの皮膚の病気は慢性化しやすいため、症状が軽くなった後も継続したケアが必要になります。
飼い主様が気をつけたいポイント
ご家庭で飼い主様がフレンチブルドッグの皮膚に対して気をつけたいポイントを紹介しましょう。
- かゆみや脱毛を見逃さない
- 定期的にシワや皮膚をチェックする
- 強い香りや刺激のあるシャンプーは避ける
- 皮膚の状態が悪化する前に受診する
フレンチブルドッグの皮膚の状態は見た目の変化が出やすいため、早めに気づくことができます。
犬の皮膚がいつもと違うと思ったら、無理に様子を見ずに早めの相談を心がけましょう。
まとめ
フレンチブルドッグは皮膚トラブルが起きやすい犬種です。
原因をしっかり突き止めて、適切な治療やケアを行えば改善が期待できます。
繰り返すかゆみや赤み、被毛の異常などが見られたら、早めに動物病院で診察を受けましょう。
当院では、皮膚病の診療に力を入れています。
皮膚のかゆみや脱毛など、気になる症状がある場合はお気軽にご相談ください。
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≪9月の診療について≫
2025年09月02日カテゴリ|お知らせ


犬の僧帽弁閉鎖不全症のステージDとは|末期心不全と向き合い、愛犬を支えるために
2025年08月28日カテゴリ|コラム
犬の僧帽弁閉鎖不全症のステージDとは|末期心不全と向き合い、愛犬を支えるために
僧帽弁閉鎖不全症は老齢の小型犬に多く見られる心臓病です。
進行性の心臓病である僧帽弁閉鎖不全症は、症状に応じてステージが進んでいき、ステージDは末期段階とも言える状態です。
ステージDに至ると治療に対する反応が乏しく、急変や命に関わる状態になることもあります。
今回は、僧帽弁閉鎖不全症ステージDについて、どのような状態なのか、考えられる治療と日常のケア、飼い主様ができることを詳しく解説します。
心臓病の愛犬と過ごす時間を大切にするために、ぜひ最後までお読みください。
僧帽弁閉鎖不全症とステージ分類(ACVIM分類)
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の弁がうまく閉じず、血液が逆流して心臓に負担をかける病気です。
ACVIM分類では進行度が次のように分けられます。
- ステージA:リスクはあるが心臓に異常なし
- ステージB1:心雑音あり、心拡大なし、無症状
- ステージB2:心拡大あり、無症状
- ステージC:症状が現れた心不全期
- ステージD:治療抵抗性の末期心不全
今回はステージDについて詳しく見ていきましょう。
ステージDとは?
僧帽弁閉鎖不全症のステージDは、これまでのステージで行ってきた内科治療(強心薬、利尿薬、血管拡張薬など)では十分にコントロールできない、治療抵抗性の末期心不全状態です。
心臓の負担が極限に達し、肺水腫による呼吸困難や全身への血流不足で、日常生活に支障をきたします。
症状としては
- 口を開けて呼吸する
- 安静時も呼吸が浅い
- 食欲不振、脱水、体重減少
- 起立困難
- 咳の悪化
- 失神やふらつき
などが見られることがあります。
ステージDの段階では、犬自身も非常に苦しく、命の危険が高い状態です。
このような状態の時はいつ心臓が止まってもおかしくないため、迷わず動物病院に連絡し、適切な対応を受けましょう。
ステージDの治療とケア
僧帽弁閉鎖不全症のステージDの治療では、少しでも楽に過ごせるように対症療法を行います。
- 利尿薬の増量や組み合わせで肺水腫の緩和
- 強心薬(ピモベンダンなど)や血管拡張薬で心臓負担を軽減
- 酸素吸入や点滴療法
- 必要に応じて入院管理
などの治療を本人の状態に合わせて行っていきます。
ステージDの段階では治療で心臓そのものがよくなることはほとんどないため、どれだけ症状を和らげ、生活の質を少しでも上げることができるかがポイントになります。
末期の段階だからといって治療ができないというわけではありません。
犬の体の負担を少しでも取り除くためにも、できる治療を行っていきましょう。
日常でできること、家族としてできること
僧帽弁閉鎖不全症のステージDの段階では、病院への頻繁な通院も難しいためご自宅でできるケアが重要になってきます。
安静で過ごせる環境づくり
犬が呼吸がしやすい体勢を整え、室温・湿度を快適に保つことで、興奮せずに安静に過ごす環境を作ることができます。
食事と水分補給
ステージDでは食欲が低下することが多いので、食べやすいフードにするなど工夫しましょう。
場合によっては流動食の検討も必要です。
こまめな観察
呼吸数、苦しさ、食欲などをよく観察し、異変があればすぐ動物病院へ相談しましょう。
通院が難しい時は、どのような対応をすればいいか獣医師に聞いてみてもいいかもしれません。
家族のサポート
ステージDの犬は体もしんどいことが多く、見ている飼い主様も辛くなるかもしれません。
飼い主様も無理をせず、家族や動物病院と連携を取りながら、犬と一緒に穏やかな時間を大切にしてください。
まとめ
犬の僧帽弁閉鎖不全症ステージDは、「治療が効きにくい末期心不全」で急変の可能性が高い状態です。
「様子を見よう」とは考えず、少しでも異変を感じたらすぐに受診し、愛犬にとってできる限りのサポートを行いましょう。
当院では、循環器診療に力を入れており、末期心不全の犬とそのご家族をサポートしています。
「呼吸が苦しそうで心配」「何をしたらいいかわからない」と感じたら、早めにご相談ください。
愛犬と一緒に過ごす時間を大切に、少しでも穏やかに過ごせるよう一緒に考えていきましょう。
京田辺・八幡・枚方・長尾の動物病院
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◎フードの日について◎
2025年08月25日カテゴリ|お知らせ
