お尻のできもの
こんにちは。
院長の奥田です。
だいぶ涼しくなってきましたね。
緊急事態宣言もあけたので、紅葉狩りなど行きたいところですが今後またどうなっていくのかは心配です((+_+))
さて、先日手術を行ったわんちゃんです。
わんにゃんドックでの診察の際に発見されました。
それなりに大きなしこりで肛門の右側にあり、肛門を左側に圧迫していました。
<以下に手術中の写真があります。閲覧ご注意ください。>
肛門の周囲にできるできものとして
・肛門周囲腺腫
・肛門周囲腺癌
・肛門嚢アポクリン腺癌
などがあり、肛門周囲腺腫は良性腫瘍で去勢手術をしていない中高齢のオスに多く見られます。
肛門周囲腺癌、肛門嚢アポクリン腺癌はどちらもその名の通り悪性腫瘍です。
今回は場所、大きさから肛門周囲腺癌、または肛門嚢アポクリン腺癌を疑いました。
腫瘍を疑ったときに考えることがあります。
果たして本当に腫瘍なのか?
腫瘍だとしたらどんな腫瘍なのか?
外科的に摘出できるのか?
できるとしたらどんな術式で行くのか?
それらを確かめるために各種検査を行います!
まずは『果たして本当に腫瘍なのか?』を確かめるところからスタートです。
一言にできものといっても、イボのようなものから腫瘍(良性悪性)、過形成、あとは炎症で腫れているだけと言うこともあります。
見た目ですべてが判断できれば良いのですが、現実は甘くなく見た目では判断できません。
そのため、判断をするための検査として針生検と言うものを行いました。
簡単に言うと、できものに針を刺して中の細胞を取って診る検査になります。
無麻酔で簡便にできるのですが、この検査だけでは確定診断まで得ることは困難です。
ただ、腫瘍なのか、炎症なのかのある程度の見極めは可能です!
さて、実際行ったところ写真のような感じで、炎症などではなく腫瘍だなと判断しました。
腫瘍だと判断し、次は『どんな腫瘍なのか?』です。
腫瘍の種類によって予後は大きく変化し、摘出方法も変わることがあります。
それを確かめるために、今度は組織生検を行いました。
簡単に言うと、麻酔下でできものを一部分摘出し、それを病理医に診てもらう検査になります。
せっかく麻酔をかけるので一気に全部摘出することも出来なくはありませんが、腫瘍によって術式や気を付けないといけないポイントも変わってくるため、段階的に行いました。
結果は『肛門嚢アポクリン腺癌』。
この腫瘍は、小さくても転移を起こしやすいたちの悪い腫瘍ですが、転移を起こしたとしても比較的長期間生存が見込めます。
摘出手術を行う前に、どんな腫瘍で今後の経過としてどんなことが考えられるか。
治療法にはどんなものがあるのか。
予後はどうなのかなどしっかりとお伝えできるのが、事前に組織生検を行うメリットでもあります(^^ゞ
肛門嚢アポクリン腺癌の治療は、外科摘出が第一です。
『外科摘出できるのか?できるとしたらどんな術式で行くのか?』これを考えた結果。。。
この子の場合、腫瘍がそれなりに大きかったため、分子標的薬と言う抗癌剤を先に使用してサイズを少しでも小さくしてから外科摘出に臨みました。
手術前の外観です。
写真だと分かりにくいのですが、点で囲んだ部分に腫瘍があります。
丁寧に剥離を行い摘出していきます。
摘出後はすぐそこに直腸の壁が見えている状態。
今後、会陰ヘルニアを起こす可能性が高いと判断し、予防的にメッシュによる整復も行いました。
術前の検査では明らかなリンパ節への転移像は認められませんでしたが、腫瘍の大きさを考えると、すでにリンパ節転移を起こしている可能性が非常に高いため、今後の経過観察が重要になります。
手術から1年後に転移がわかることもあるので、長期的な視点で治療していきます。
術後は特に問題なく、うんちも問題なく出せているとのこと(^^)/
また、腫瘍も完全摘出できていました。
抜糸も終わり、今後も頑張ろうK君!
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